第56話 湖畔のキャンプ場#5(編集中)

おはなし

夏の終わり。

青い空の下、アオアオ湖のキャンプ場に、2台の車が到着しました。

クリビー「着いたーーーっ!」

真っ先に飛び出したのはクリビーでした。

クリビー「湖だ!」

モモビー「広いなー!」

モモビーも荷物を放り出しそうな勢いで走り出します。

ネギーン「待ってください!テントを組み立ててから遊びましょう!」

ネギーンが慌てて追いかけます。

今回のキャンプメンバーは、かなりにぎやかになった。

クリビー、モモビー、ネギーン。

そして女の子組の、トマ子、マロン、長ネギ子。

そして付き添いの大人は、ナスビー博士、マルナス助手、そして――ナスミさん!

子供たちの頼みとあらば、「喜んで!」とあっさり引き受けてくれたナスミさん。

そして、ナスミさんが来るならば、「なんだ、仕方ないな!」とあっさり外に出て来たナスビー博士。

え?昨日まで、あんなに落ち込んでたのに?

元気が戻る時は、そんなもの。

なぜそんなに落ち込んでたのかとか、理由を聞いたり、ナスビー博士を責める人は誰もいませんでした。

ナスミ「いいところですね。」

ナスミは湖を見ながら微笑みました。

クリビー「でしょう!」

クリビーは胸を張っていいます。

クリビー「(博士を元気にするために、ぼくたちが選んだんだよ!)」

クリビーは少し小声でナスミさんに伝えました。

ナスミ「まあ!そうだったんですね。」

ナスミがナスビー博士を見る。

ナスミ「ナスビー博士、今日は楽しみましょうね。」

ナスビー「えっ!」

突然、話を振られたナスビー博士は、少しだけ固まりました。

ナスビー「も、もちろんです、ナスミさん!」

いつもの調子を取り戻そうと、ドヤ顔になった。

ナスビー「まあ、子どもに色んな経験をさせてやるのが、大人の役割だからな!」

マルナスが小声で言った。

マルナス「博士、さっきからニヤニヤしすぎデスヨ!」

ナスビー「うっ、うるさい!」

そんな大人たちを見て、クリビー・モモビー・ネギーンの三人は顔を見合わせました。

マロン「クリビーさん。」

クリビー「わっ!」

マロン「わたし、キャンプってはじめて。」

クリビー「マ、マロンちゃんも?ぼくもはじめてだよ!」

トマ子「あ~あ、トマオも来ればよかったのに。」

長ネギ子「トマ子~!他の男子の前でトマオの話は遠慮しなさいよ!」

トマ子「そうだけどぉー。」

モモビー「最初に行っておくけど、女子は女子で遊べよな。」

ネギーン「モモビー!そんなこと言わないで、せっかくですから、みんなで遊びましょ!」

子供たちは子供たちで、男女でぎくしゃくしていました。

しかしながら、作戦は順調、というよりもう、ここまで来たら成功です。

あとはキャンプを楽しみだけでした。

その日の午前中。

全員で協力して、一通りテントを張り終えました。

そして、お昼ごはんまでの空き時間、子どもたちは湖のそばへ走っていきました。

クリビー「見て見てー!」

クリビーが取り出したのは、以前ナスビー博士が発明した『何にでも変身する、万能浮き輪』でした。

今回は子供たちの人数分の浮き輪が用意されていました。

クリビー「変身!」

クリビーが叫びます。

すると浮き輪が、ふわっと形を変えました。

クリビー「アヒル!」

クリビーの浮き輪は、大きなアヒルボートのような姿になりました。

モモビー「おれっちは恐竜!」

モモビーの浮き輪は、あっという間に大きなティラノサウルスの形へ。

ネギーン「僕は……カメですね!」

ネギーンは妙に乗り心地が良さそうなカメを選びました。

トマ子「すごーい!これかわいい~!」

トマ子は浮き輪をドーナツに変身させていました。

マロン「わあ・・・。」

マロンは可愛らしいピンクのティーカップ。

長ネギ子は、リボンのついたぐるぐるキャンディー。

モモビー「女子はスイーツみたいのばっかり!」

モモビーは苦笑いをしました。

長ネギ子「別にいいじゃん!」

モモビー「食べられないけどな!」

長ネギ子「見た目が大事なのー!」

子どもたちは大笑いしながら、湖の浅瀬で遊び始めました。

アヒル。

恐竜。

カメ。

ドーナツ。

ティーカップ。

キャンディー。

全部で六つの浮き輪が、水面をぷかぷかと漂っていました。

クリビー「こっちだよー!」

モモビー「待てー!」

ネギーン「恐竜が来ましたよー!」

トマ子「きゃー!」

湖は大騒ぎでした。

湖畔から見守るマルナス。

ところが――。

その少し離れた場所。

水面に、何かが浮かんでいました。

最初は小さな黒い点だったものが

ゆっくりと近づいてきて

水面から、長い首のようなものが伸びました。

そして――。

パシャ・・・。

水面が小さく揺れます。

それは、子どもたちの浮き輪よりずっと大きいものでした。

長い首。

丸みを帯びた頭。

そして、背中の一部が水面から少しだけ見えていました。

まるで――。

古い言い伝えにある、水の怪物。

いわゆる『ネッシー』のような生き物です。

クリビー「見てー!アヒルからイルカに変えたら速いよー!」

クリビーが叫びます。

モモビー「恐竜、ガオー!ドーナツ食べるぞ!」

トマ子「食べちゃダメ~!私も、ライオンに変身!」

モモビー「ギャー!!!ドーナツライオンだ!!!」

六個の浮き輪と子供たち。

七つ目の影には、誰も気づきません。

七つ目の影の、光る二つの目は、子供たちをじっと見つめていました。

まるで、自分も一緒に遊びたいな・・・と。

しかし、ゆっくりと湖の奥へ戻っていきました。

パシャ…。

そして、その姿は消えました。

マルナス「そろそろお昼ですよー!」

マルナスが岸から呼びました。

クリビー「はーい!」

子どもたちは一斉に戻ってきます。

湖には、シーンと静かになりました。

もう、七つ目の影は、どこにもなくなっていました。

キャンプは、その後も楽しく続きました。

夜は、みんなでバーベキューをしました。

その後、キャンプ場主催のナイトウォークのイベントで、キャンプ場の管理人に案内され、懐中電灯で森を散歩しました。

夜には星を眺めました。

ナスビー博士も、いつの間にかすっかり元気を取り戻していました。

クリビー「博士、笑ってる!」

クリビーが言いました。

つづく

編集中

「わ、私は最初から元気だったぞ!」

「じゃあ、なんで部屋に閉じこもってたの?」

「……」

 ナスビー博士は黙った。

「まあ、いいじゃないですか」

 ナスミが笑う。

「こうしてみんなで来られたんですから」

「そ、そうだな」

 ナスビー博士は少し照れながらうなずいた。

 そして、あっという間に最終日。

「最後は花火だー!」

 子どもたちは手持ち花火を手にした。

 夜のキャンプ場。

 湖は真っ黒な鏡のようで、空には星がたくさん浮かんでいる。

 シュッ。

 パチパチパチッ。

「きれい!」

 トマ子が声を上げる。

 マロンも花火を高く掲げる。

「見て! 星みたい!」

「危ないから、ちゃんと前を見てくださいね」

 ネギーンがみんなに注意する。

 モモビーは何本もの花火を見比べている。

 そんな子どもたちから少し離れたところで――。

 ナスビー博士とナスミは、一本の線香花火を持っていた。

「線香花火、懐かしいですね」

 ナスミが言った。

「ああ」

 ナスビー博士は小さく笑う。

 二人は並んで座った。

 火をつける。

 ぽっ。

 小さな赤い玉が生まれる。

 しばらくすると、そこから細い光が伸びた。

 ぱち……。

 ぱちぱち……。

 小さな光が、夜の中で静かに弾ける。

 湖面にも、その光がほんの少しだけ映っていた。

「きれいですね」

「……ああ」

 ナスビー博士は花火を見つめながら言った。

「こういうのも、悪くないな」

「キャンプですか?」

「……まあ、それもだ」

 ナスビー博士は少しだけ照れた。

 ナスミは何も言わず、微笑んだ。

 線香花火の光が、二人の横顔をほんのり照らしている。

 風が吹く。

 小さな火の玉が揺れる。

「……落ちるなよ」

 博士が思わずつぶやく。

「博士、そんなに真剣に見るものですか?」

「これは集中力が必要なんだ!」

「ふふっ」

 ナスミが笑った。

 その瞬間――。

「おいっ!」

 遠くから怒鳴り声が飛んできた。

 二人が振り返る。

「夜なのに、いつまで騒いでるんだ!」

 キャンプ場のおじさんだった。

「す、すみません!」

 マルナスが慌てて頭を下げる。

「花火は静かにやってくれ! 周りには寝てる人もいるんだから!」

「はい……」

 子どもたちは一斉にしょんぼりした。

 さっきまでの楽しい雰囲気が、一瞬で消えてしまった。

「……」

 ナスビー博士も、手元の線香花火を見る。

 火はすでに消えていた。

「……終わっちゃいましたね」

 ナスミが少し残念そうに言う。

「……ああ」

 ナスビー博士は苦笑した。

「まあ、こういうこともある」

 子どもたちも、黙って花火を片付け始める。

 そのとき。

 湖の向こうから――。

 ぱしゃ。

 小さな水音が聞こえた。

 みんなが振り返る。

「……?」

 しかし、暗い湖には何も見えない。

 月明かりだけが、水面に細長く伸びている。

 誰も知らない。

 あの昼間、湖で遊んでいた浮き輪が六つだったことも。

 そして――。

 湖の中には、もうひとつ。

 七つ目の「何か」がいたことも。

 それは今夜も、静かに水面の下を泳いでいた。

 アオアオ湖の奥深くへ。

 誰にも見つからないまま――。