やや薄暗い地下鉄のホームに、1羽のコウモリが飛んできました。
それも、ナスビー博士に向かって飛んできます!
ナスビー「ぎゃあ!コウモリーッ!!!」
上空から目の前に向かってくるコウモリに対し、ナスビー博士は両腕で顔を防御しようと隠しました。・・・ところが、コウモリはナスビー博士に衝突することなく、博士の顔の高さくらいの位置で羽ばたき、上下しながら空中の定位置をキープしていました。
ナスビー「なんだなんだ!?」
バッサ、バッサ・・・
羽ばたきつつ、ナスビー博士の目の前にいるコウモリ。
よく見ると、その両足には深緑色の封筒が握られていました。
コウモリ「アナタガ、ナスビー博士、デスネ?」
ナスビー「わっ!!!コウモリがしゃべった!?」
コウモリ「ワタシハ、『デンショバット』。手紙ヲ、オトドケスル、ロボットデス。」
ナスビー「『デンショバット』?伝書鳩(でんしょばと)じゃなくて?」
コウモリ「ハイ・・・コレ、ナスミ様カラノ、オテガミデス。」
ナスビー「え!?ナスミさんから!?」
コウモリ「ハイ・・・ソレデハ、ワタシハコレデ。」
自身をデンショバットだと名乗るそのコウモリ型のロボットは、ナスビー博士に手紙を渡すと再び地下鉄の薄暗い空間のどこかへと消え去ってしまいました。
ナスビー「・・・あんな高精度ロボット、初めて見たなあ。そうだ、この手紙、開けてみよう!」
突然の出来事に戸惑うナスビー博士でしたが、取り急ぎナスミさんからだという手紙のメッセージを確認しました。以前、ナスビー博士に届いたナスミさん(?)からの手紙と同じく、深緑色の封筒に、赤い封蝋が施されていました。
手紙の内容は・・・
『大好きな ナスビー博士へ♡
実は、今日、泊まる予定のお部屋でワタクシの手料理をご馳走してさしあげたくて
クリスマスの特別な料理には少々お時間がかかるため、
ワタクシだけ、一足先に向かわせていただきます。
ここで待ち合わせとお約束していたのに、ごめんなさいね。
博士が到着する頃に、受付近くのロビーでお待ちしています。
ナスミより♡』
・・・
というものでした。
ナスビー「(おおっ!ナスミさん、私のために、手料理を準備してくれているのか!もうっ!そんなに気を遣わなくていいのになぁ・・・!先に行ってしまったなら仕方ない!スキースキー山まであと電車で2時間くらいだしな、もう少しで会えますなぁ~ナスミさん♡)」
なんとも怪しいデンショバットからの手紙・・・本当にナスミさんが送った手紙なのでしょうか?そもそも、最初に届いたこの旅行のお誘いの手紙も・・・?
何でも自分の都合のいいようにポジティブに考えるナスビー博士には、怪しいと思う気持ちは一片もありませんでした。
嬉しさのあまり、早くナスミさんに会いたい気持ちでルンルン状態です。
その様子を遠くから覗いていたクリビーたち3人組。
クリビー「ねえ、聞いた!?あのコウモリのロボット『ナスミさんからの手紙です。』ってしゃべってたよね・・・!?」
モモビー「聞いた聞いた!ナスミさんからナスビー博士に何の用事があるんだ?」
ネギーン「う~ん、わざわざ手紙で連絡というのも不思議ですね。もしかしたら、お互いに携帯電話の連絡先を知らないのかもしれません。」
3人は手紙の内容までは見ることができませんでしたが、この突然の怪しい出来事に困惑していました。
ピロリロリ―ン・・・
『まもなく、3番線に、スキースキー駅行き・・・の、電車が参ります・・・。』
そうこうしていると、ホームに駅のアナウンスが流れ、目の前の3番線のホームに電車がやってきました。
ナスビー博士は今度、前から数えて3号車目の車両に乗りました。
モモビー「おい、おっさん乗ったぞ!」
クリビー「行こう!」
ネギーン「はいっ!」
クリビーたち3人も続いて、5号車目の車両に乗りました。
ガタンゴトン、ガタンゴトン・・・
ネギーン「・・・これって、終点のスキースキー駅まで行く快速電車ですね。もしかして、ナスビー博士はスキースキー山にあるスキー場に向かってるのではないでしょうか?」
モモビー「えー!?あの博士が、スキースキー山にぃ!?」
クリビー「え???博士、単に、スキーをしに行くってこと?」
モモビー「いやいや、そうじゃなくて・・・。」
クリビー「???」
ネギーン「クリビーは知らないですか?クリスマスの時期の、スキースキー山のスキー場といえば、恋人の聖地になっているんですよ。」
クリビー「恋人の聖地?」
ネギーン「つまり、カップルばっかりということです!」
クリビー「そんな場所に博士が、1人で!?」
ネギーン「・・・まあ、終点に着く前に、他の駅で降りる可能性もあります。」
クリビー「どこで降りるか気になるね!」
モモビー「おもしろそうだ!このままどんどん付いていこうぜ!」
ネギーン「それが・・・どちらにせよ、僕のお小遣い全てを使ってもスキースキー駅までの切符の料金が足りないので、追跡調査は改札の手前で終わりです。」
モモビー「うわっ!マジか!ここから肝心なところだったのに!」
なんと、もうお小遣いが足りなくなるというネギーンの計算により、クリビーたち3人は落胆しました。
クリビー「仕方ないよ、モモビー。僕、ここまで来るだけで充分ドキドキだったし!」
ネギーン「そうですね!僕も、とてもワクワクして楽しかったです!」
モモー「う~ん・・・。」
なにやら、納得がいかなそうなモモビー。
モモビー「2人とも、こんなところであきらめるなんて勿体ないぜ・・・!こうなったら、最後の手段に出るぞ・・・!」
クリビー・ネギーン「最後の手段???」
モモビー「いいか、おっさんが電車を降りたら、後はおれっちにまかせろっ!」
ガタンゴトン・・・ガタンゴトン・・・
クリビーたち3人は、とりあえずナスビー博士が降りる駅で一緒に下車することにしました。そして、クリビーとネギーンはモモビーの言う『最後の手段』に身をまかせることにしたのでした。
一体どんな手段なのでしょうか?
・・・
一方その頃、ナスビー博士不在の、ナスビー博士の研究所では・・・
マルナス助手「ふう!これで準備万端デース!」
研究所に1人きりのマルナス助手は、一生懸命バタバタと忙しく動き回っていました。
そうです、今日はクリスマスイブですから、例の、クリスマス社からの依頼のサンタロボ100体を空に飛ばす準備をしていたのです。
研究所のすぐ外にはピカピカに磨かれたサンタロボ100体が並んでいます。
いよいよ、すべてのロボが発車するようです!
マルナス「3・2・1・・・GOデース!!!」
プシュー!!!
マルナス助手は掛け声と供に、サンタロボの制御盤の発車スイッチを押しました。
プシューという勢いのある無数の空気音と同時に、サンタロボたちは一斉に空へと飛び上がってゆきました。
やがてロボたちはそれぞれ色んな方向へと散ってゆきました。
マルナス助手は制御盤についているモニターを確認しました。このモニターでは、100体のロボがそれぞれどこにいるのか、異常が無いか、確認することができるのです。またサンタロボに付いているカメラにより、各機から見える状況もリアルタイムでデータが送信されてきます。
マルナス「予定通り、各機安定した状態で運転できていマース!ふぅ、ヨカッタヨカッタ!」
機械やロボットの技術に関して優秀なマルナス助手ですから、こんなことはお手の物。
たとえ、ナスビー博士がいなくても、1人で大仕事を成し遂げてしまうのでした。
マルナス「もし、ロボたちに異常があったら警報が鳴るようになってマスカラ、ワタシは少しゆっくりとしますカ~。いつもうるさい上、世話が焼けるハカセもいないことデスし・・・。」
仕事をひと段落し、一息ついたマルナス助手でした。しかし・・・
マルナス「・・・どうしてデショウ?なぜか、す~ごく嫌な予感がシマス。ハカセったら、行き先も秘密にして、一体どこへ行ったんデショウネ・・・。」
ナスビー博士がいなかったらいなかったで、とても心配しているマルナス助手なのでした。
そして、彼の嫌な予感というのは、その後、的中することになってしまうのです・・・。
つづく


