【第41話】クリスマスの大大大事件!#3

おはなし

ナスビー「また君たちか!まあ、いい。立ち話もなんだから、中に入りなさい!」

クリビーたち3人は『みんなと違ったクリスマス』をどう過ごすか、ナスビー博士の意見を聞くために、研究所を訪れていました。

研究所の室内に入ると、いつものことながら、マルナス助手が「君たち、よく来たネー!」と快く迎えてくれました。

クリビーたち3人は、1階のテーブルの前にある、横長のソファに座らせてもらいました。テーブルを挟んで、向かい側にナスビー博士が座ります。

マルナス助手は冷蔵庫から、濃い緑色の大きなボトル瓶を取り出し、3人分の高脚のグラスとともにテーブルへ持ってきてくれました。

クリビー「わあ!何コレ、お酒!?」

マルナス「お酒みたいですけど、中身はジンジャーエールなのデース!」

クリビー「ジンジャーエールかあ!」

マルナス「いやネ、昨日は仕事がひと段落したので、お酒でも一杯、飲みたい気分だったのデスヨ・・・。でもネ、ワタシはお酒が飲めないので、代わりにコレを買ってみたのデース!」

マルナス助手はそう言いながら、3つのグラスにジンジャーエールを注ぎました。グラスの底に琥珀(こはく)色のソーダ水がシュワシュワと流れ込みます。

ネギーン「なんか、おしゃれに見えますね!」

マルナス「デショ?こうやって飲めばお酒じゃなくても、なんか嬉しい気分になるカナって♪・・・でも、結局こんなに余ってしまいましたカラ、ちょうど君たちが来てくれてよかったデース!まあ、昨日、栓を開けてしまったので、少しだけ炭酸が抜けてしまったのは勘弁してクダサ〜イ・・・。」

言われてみれば確かに、炭酸の小さな気泡が、心ばかり少ないように見えました。

マルナス「さあ、ドウゾ!」

『いただきまぁ〜す!』

クリビーたち3人は、それぞれグラス片手に声を揃え、ジンジャーエールに口をつけました。

ナスビー「ところで、君たち、今回の相談とやらは何なのかね?」

一呼吸おいたところで、ナスビー博士が質問をしました。

クリビー「・・・実は、僕たち3人、今年は『みんなと違ったクリスマス』を過ごしたいんだけど・・・。」

ナスビー「『みんなと違ったクリスマス』???ああ、さっき玄関の前でそう言ってたな!そりゃ一体どういうことかね?」

クリビーはナスビー博士に説明しました。チキンやケーキ、サンタさんのプレゼントもいらない、クリスマスっぽいことを一切しないで、みんなと違った思い出を作りたいと・・・。

まあ子供たちがまた訳のわからないことを言ってるなという、いつも通り軽く聞き流す態度のナスビー博士。ところが、クリビーの説明を横で聞いていたマルナス助手は、、、

マルナス「えええエエエーー!?クリスマスなのに!?クリスマスらしくないことを!?ナンデ!?ナンデー!?」

マルナス助手はクリビーたちの言うことに酷くショックを受けているようでした。そして、続けてこう言いました。

マルナス「クリスマスといえば、楽しいことがいっぱいデスヨ!?ローストチキンやクリスマスケーキだけじゃなくて、ジンジャークッキーとか、シュトーレンとか、おいしいものがたくさん食べれマスし!ああそうデス、楽しい遊びやイベントもたくさんアリマスヨ!ワタシも子供の頃は、クリスマスツリーを飾りつけしたり、町内会のクリスマスコンサートに行ったり、キャンドルサービスに参加したり・・・クリスマスらしいことをた〜くさんしマシタ!そんな、一年の中で最も盛り上がるイベントがクリスマスですヨ?!なのに、ドウシテ?ドウシテ?ドウシテ今年はそんなコトを考えるようになってしまったんデスカ?!」

モモビー「・・・」

何か相談に来たかと思えば、まるで夢のないことを言い出したクリビーたち。マルナス助手からしてみれば、子供たちを見守る大人の立場として、とても心配です。

クリビー「とにかく、今年はそうするって3人で決めたんです!」

マルナス「そんナァ・・・。ちょっと、ナスビー博士も何か言ってやって下さいヨ!って、あっ・・・。」

マルナス助手は牛乳瓶の底のように分厚い丸眼鏡の下で、横目でナスビー博士の方を見ました。

そして、少しだけ小さい声でこう言いました。

マルナス「・・・そういえば、博士もクリスマス反対派(?)デスものネ。あんなものは商売や金儲けのためにあるイベントだって、毎年文句ばかり言ってましたカラ・・・。」

クリビー「やっぱり!実は僕たち、ナスビー博士がクリスマスを嫌ってそうだから相談しに来たんだ!」

クリビーは笑いながら、そう言いました。

モモビー「ははは、おっさんがクリスマスを好きな訳がないよな!」

ネギーン「博士らしいですぅ!」

ところが・・・

ナスビー「そんなことないぞ!クリスマスは、素晴らしいイベントだ!」

マルナス「へ!?」

クリビー「え!?」

モモビー・ネギーン「えーーーー!?」

ナスビー博士以外の4人は、一斉に声を上げました。

ナスビー「クリスマスはな、恋人のためにあるのだ!2人だけの秘密の思い出を残すならやっぱりクリスマスだろ!?ナハハハハハッ!」

マルナス「えええ!?この前まで『クリスマスではしゃいでる奴なんて●●喰らえくって!』言ってませんデシタ!?あと『クリスマスにデートする恋人は全員別れてしまえ!』トカ・・・?」

明らかに様子が変わったナスビー博士を見て、マルナス助手はとてもビックリしていました。

クリビー「そんなぁ・・・博士も、クリスマスが好きな、みんなと同じ、多数派だったのかぁ・・・。」

ネギーン「なんか、意外ですぅ・・・。」

ナスビー「意外か?ふふふ、モテる大人の男はクリスマスというイベントを大切にするものなのだ。特に、クリスマスイブの夜なんて最高にロマンチックじゃないか!・・・ぐふふふふふ!!!」

何やら1人で笑い出したナスビー博士・・・気持ちが悪いので、マルナス助手も、クリビーたち3人もドン引きです・・・。

ネギーン「なんか、今日の博士は、博士らしくないですぅ・・・。」

クリビー「違和感ありまくりだね!」

モモビー「じゃあ、相談してもしょうがねえな!」

クリビー「そうだね!それに、なんか気持ち悪いから帰ろう!」

こうして、相談に来たものの、あまり参考にならなそうだったので、クリビーたち3人は帰ることにしました。

・・・

クリビーたち3人が帰った後、マルナス助手はとても心配な気分になっていました。

マルナス「ハカセ・・・、子供たちは一体何を思ってあんなことを言っていたのでショウ?もしかして、いつも私たちのようなアブナイ大人と関わっているせいで、夢のない現実的な考えの子供になってシマッタのデショウカ・・・。ハカセはどう思いマス?」

ナスビー「なぁに、子供の言うことだ、いつも通りふざけているだけさ!気にすることはない。」

子供たちのことが心配なマルナスに対して、ほぼ無関心のナスビー博士。

そして・・・

ナスビー「ああそうだ、マルナス。24日の、クリスマスイブのことなんだが、急用ができてな!例のクリスマス社からの依頼の件、君1人で対応しといてくれたまえ。」

マルナス「え!?」

ナスビー「なんだ、1人では心細いのか!?」

マルナス「イヤ!そこじゃなくて、仕事の方は(正直)1人で(充分)できますケド!・・・ハカセが、クリスマスイブに予定!!!???」

ナスビー「ハハハッ、私にプライベートの予定があっておかしいか?」

マルナス「プ、プライベート!?(友達のいないハカセが!?)」

ナスビー「まあ、多分24日と25日で泊まりの予定になりそうだから研究所の留守は君に頼んだよ♪」

マルナス「え、え、え、(ケチな博士がこの時期に宿泊~??)・・・留守番は(ハカセがいてもいなくてもあまり変わらないデスカラ)全然構わないデスケド。・・・ちなみに、一体、誰と、どこへ行かれるんデスカ?」

ナスビー「ひ・み・つだ☆」

マルナス「・・・(キショッ!!!)」

ナスビー博士とマルナス助手は、このような会話をしたのでした。

ナスビー博士は今日届いたナスミさん(?)らしき人物からの手紙に書いてあった注意書きの通り、予定の詳細をマルナス助手には伝えませんでした。

・・・

マルナス「(とても不思議デス・・・子供たちがクリスマスを嫌って、ナスビー博士がクリスマスを好きになるなんて・・・まるでいつもとあべこべのことが起きていマス。何か今年のクリスマスは良くないことが起きるんじゃ・・・。)」

マルナス助手の心の中では胸騒ぎがしていました。今年のクリスマスイブの日にはクリスマス社から注文を受けた100体のサンタロボを飛ばすという大仕事もあるのに・・・。

マルナス「(・・・ああ作者様が何か大きな事件でも起こしマセンヨウ。)」

マルナス助手は心の中で静かにそう願いました。

つづく