【第24話】この町唯一の歯医者さん#2

おはなし

役割分担をしようという、ロコロコの提案に賛成したクリビーとグリンピー。

でも、肝心なのは、取材に行く役割を誰がやるかです。

ロコロコはじゃんけんで負けた人が取材に行くことにしようと言います。

クリビーは少し考えました。

クリビー「(じゃんけんで勝てば、あの幽霊城にはもう行かなくていいんだ・・・。それに、3人のうち2人は行かなくて済むんだから、じゃんけんで負ける確率の方が低い・・・。)」

グリンピー「僕は賛成!じゃんけんで決めるんだから文句なしの一発勝負にしよう!」

クリビー「・・・僕も賛成!負けても、恨みっこなしだよ!」

このとき、クリビーは自分が負けることは一切想像していませんでした。勝つ人の方が多いんだから、自分も勝つだろうと、打算していたのです。

ロコロコ「2人とも、準備はいいね?それじゃ、じゃんけん、ポン!」

クリビー「ぎゃーーーーー!」

勝負が決まったとたん、クリビーは悲鳴を上げました。なんと、チョキを出したクリビーが、グーを出した2人に負けてしまったのです。

グリンピー「やったぁ〜!!!神様っ、ありがとうございます!!!」

ロコロコ「ふぅ・・・。悪いけど、クリビー、取材の方、よろしくね。」

クリビー「・・・ううっ。わ、わかったよ。約束だから。頑張るね・・・!」

安堵したロコロコとグリンピーに対してそう答えたクリビーでしたが、今にも泣き出しそうな気持ちで胸がいっぱいでした。

その後、3人はハク先生に質問することを紙に書いてゆきました。そのメモを託されたクリビー。

ロコロコ「すっかり遅くなってしまったね。さあ、クリビー、申し訳ないけど、日が沈む前に急いで行って来てくれ。頼んだよ!」

クリビー「大変だ、急がなきゃ!」

ロコロコの家を出ると、もう日が沈みかけていました。クリビーは大慌てで家を出発しました。

グリンピー「気をつけてね!」

ロコロコ「頑張ってー!」

・・・

クリビーは再びあの恐ろしい外観の歯医者へと向かいました。

入り口に続く長い階段を駆け上がって行きます。

クリビー「(怖いけど、早くしないと、真っ暗になってもっと怖くなっちゃう!)」

クリビーは勇気を出して、1人でまたあの重たい正面玄関の扉を体重をかけて押し開けました。

ギィィィィ・・・・・・

という、軋むような音が響きます。

???「遅かったじゃぁないか・・・。」

クリビー「わっ!!!」

ハク先生「なかなか来ないから心配したぞぉ。ようこそ、我が最高の歯科医院へ・・・。」

クリビー「は、はじめまして!僕、栗のクリビーです!おじゃまします!!!遅くなってしまって、ごめんなさいっ!!!」

玄関を開けると、目の前にハク先生の姿がありました。クリビーは頑張って大きな声でしっかりと挨拶をしました。

ハク先生「ほぅ。君は1人で来たのか?さっきは友達も一緒じゃなかったか?」

クリビー「ちょ、ちょっと事情がありまして、やくわりぶんたんをすることになりまして、僕は取材係で、1人で来ました・・・!」

ハク先生「そうなのか!いやぁ〜、君は取材係になれてラッキーだねぇ・・・。今日は私自ら我が歯科医院の魅力を存分に紹介してしんぜよう・・・!」

クリビー「(しんぜよう?)あ、ありがとうございます!!!」

クリビーはハク先生を怒らせないように、元気よく、礼儀正しく、ハキハキと返事をしました。

想像していた通り、お城の中は全体的に薄暗く、高い天井とホールのように広い玄関にはアンティーク調の内装が施されていました。吸血鬼が100年前から住んでいた家というのが一番わかりやすい例えでしょうか・・・。

ハク先生「さぁ、着いて来たまえ・・・。」

そう言い、ハク先生は部屋の奥の方の、玄関より更に薄暗い廊下へと進んでゆきました。

トコトコトコ・・・

クリビーはハク先生の後ろを早足で着いてゆきます。

クリビー「あ、あの、この悪魔みたいな石像をなぜたくさん置いているんですか・・・?」

クリビーは思い切って気になることを質問してみました。

ハク先生「ああ、この石像か。いい質問だねぇ。これは『虫歯』の原因になる『バイ菌』をイメージした悪魔の彫刻なんだ。患者さんに虫歯の恐ろしさをしっかり認識してもらうために、色々な場所に飾っているのだ・・・。」

クリビー「そ、そうなんですね!(なるほど、ハク先生としても、歯医者として、そういう意味で気味の悪い石像を置いていたんだ。確か、入り口の外の、階段の下にも、同じような悪魔の石像があったなぁ。)」

クリビーは聞いたことをどんどんメモしてゆきました。

それにしても、この廊下も悪魔の石像も、不気味なことには変わりありません・・・。

しばらく歩くと、ハク先生は立ち止まってこう言いました。

ハク先生「そうだ・・・、今日は特別に私のとっておきのコレクションを見せてあげよう。君は礼儀正しくて、元気もいいし、色々と興味があるみたいだから、特別にだ・・・!」

クリビー「(こ、コレクションって、まさか!?)あ、ありがとうございます!!!ぜ、ぜひ見てみたいです!!!」

クリビーはとっさに明るく調子のよい返事をしました。一度、元気で礼儀正しい態度をとったので、その後もどんどん調子が出てきます。後に引けなくなってしまうとはこのことです、それもいい意味で、ですが。

ハク先生「ここは、私の『秘密の部屋』だ。ここで見たことを記事にしても構わないが、写真撮影は禁止だぞ。」

クリビー「は、はい!わかりました!」

ハク先生はポケットから『秘密の部屋』の鍵を取り出し、クリビーを中へと案内してくれました。

クリビー「・・・。」

部屋の中を見て、クリビーは凍りついて無言になりました。

そこには、生々しい、動物や魚の歯や顎の骨、剥製や、模型などが展示されていました。

つづく