11月になり、季節は急激に秋になりました。
夏とは違った雲のカタチが、季節の変わり目を教えてくれます。
今年の夏はとても暑かったので、9月、10月になっても厳しい『残暑』(ざんしょ)が続きました。
『この暑さはいつまで続くんだ!!!』と誰もがそう思っていたある日のこと、
やはり季節は裏切らず、一年の中で一番過ごしやすい気候がやってきました・・・。
そんな秋の風が気持ちのよい今日、
ネギーンは一人モヤモヤと悩んでいました。
これは、ネギーンの心の中のつぶやきです・・・。
ネギーン「(今日は涼しくてとても気持ちがいい日だから、たまにはみんなで一緒に読書がしたかったなあ・・・。)」
さて、時は、クリビー、モモビー、ネギーンが昼寝をする前にさかのぼります。
三人は学校が終わると、いつもように広場に集まっていました。
クリビー「ねえ、今日は何する?」
モモビー「昼寝ごっこ!」
クリビー「昼寝ごっこ!?いいねー!!!」
ネギーン「(え!?こんなに気持ちがいい天気なのに、昼寝なんてもったいないですぅ・・・。)」
何か言いたそうなネギーン、ですが、黙っていました。
クリビー「ネギーンも、それでいい?」
ネギーン「はい!OKですよ~!(はぁ・・・2対1で賛成なら仕方ないです・・・。)」
・・・
最近、ネギーンにとって、このようなことがたくさん続いていました。
先週のこと、たまには映画館に行きたい!と騒いだクリビーたちは、無理矢理ナスビー博士に3人分の映画のチケットを買わせて譲ってもらいました。
その券でさっそく3人で映画を見に行こう!と、なりますが、何の映画を見るか?で
ネギーンは『ある惑星の戦争の歴史』というドキュメンタリー映画を見たかったのに、
クリビーとモモビーは2人そろって『名探偵ナンVS. 大泥棒パン』というアニメ映画が見たいというので、

やむなく、ネギーンはクリビーとモモビーに合わせることにしたのでした・・・。
その少し前にも、こんなことが。
学校で、クラス対抗の球技大会がありました。
今年、男の子たちのグループは野球で対決することになりました。
クリビーは1組、モモビーとネギーンは2組なので、1組と2組は敵同士な訳ですが
放課後は関係なく、クリビーは野球の得意なモモビーと練習をして上手くなりたいと思っていました。
一方でネギーンは『僕が練習してもあまり上手くならないし・・・。』と後ろ向きに考えていました。
そんなこともあり、放課後の遊びは野球の守備練習が続いて、ネギーンはちょっとイヤイヤやっている訳で、退屈な時間になってしまったのでした・・・。
ネギーンは真面目な性格で、言葉遣いも丁寧な子供です。
そして、本を読むのが大好き。
1人でいたら、ずっと図書館にこもっていそうな感じのネギーンですが、クリビー・モモビーという友達ができて、外に出かけて色々な冒険をするのがとても楽しいと感じるようになったようです。
でも、そんなネギーンだってやっぱり自分の好きなことを優先したい日もあります。
そして、自分の好きなことや、面白いと思っていることを、クリビーとモモビーにも知ってもらいたいと思う気持ちも持っているのでした。
・・・
という訳です。さあでは、時を今に戻して話を進めましょう。
ネギーン「(いつも僕ばっかり、この2人に合わせてばかりだ・・・。)」
クリビー・モモビーの2人に合わせて、一緒に横になっていたネギーンですが、ついに『しびれを切らして』(我慢できなくなって)起き上がりました。
ネギーン「ごめんなさい!僕、予定があったのを思い出しました!先に行きますね!」
クリビー「スヤスヤ・・・。」
モモビー「ぐがーーーーー・・・。」
ネギーン「(2人とも聞こえてないですね・・・まあ、いいや・・・。)」
ネギーンは一人、ある場所に向かおうと、歩き出しました。
・・・
ネギーンはこの、友達に対して抱えている不満を、お母さんとお父さんに相談したことがありました。
お母さんはこう言いました。
ネギママ「まあ・・・、ネギーンちゃんは心がやさしい子なのね。あなたは他のお友達よりも大人(おとな)なのよ。でも、たまにはお友達にも正直な気持ちを伝えてみるのはどう?」
ネギーン「う・・・う~ん。(正直に言えないから悩んでるんです・・・。)」
お父さんはこう言いました。
ネギパパ「そうか、ネギーン。実はパパも子供の頃、同じようなことで悩んだ時期があったんだ。」
ネギーン「そうなの?」
ネギパパ「そうさ。パパもネギーンみたいに勉強が大好きで真面目な子供だったんだ。小学校の友達たちは勉強があまり好きじゃなかったし、パパほど真面目な子もいなかったから、『自分に合った友達』がいなかったんだ。」
ネギーン「『自分に合った友達』?」
ネギパパ「そうだよ、パパは『自分に合った友達』とだけ付き合えばいいと思ってる。嫌な気持ちなのに、無理して付き合う必要はないよ。」
ネギママ「確かに、そうね!嫌な思いを我慢してまでお友達といる必要はないわ。」
ネギーン「そうなの?」
ネギパパ「うん、それに、『自分に合った友達』は必ず現れるさ。パパは高校生になってとても仲の良い友達ができたんだ。パパは勉強が好きな友達が集まる高校に進学したんだ。そこには自分と話の合う友達がたくさんいたよ。いや~、パパは『自分に合った友達』に恵まれた、高校生活が人生で一番楽しかったなあ。」
ネギママ「ママはね、大学生になって、一番仲のいいお友達に出会えたの。今でも毎年2人で旅行に行くくらい仲が良いのよ。」
ネギパパ「いいか、ネギーン。きっと、今の小学校のお友達はネギーンのレベルに合った友達じゃないんだよ。だから、無理して仲良くする必要はないし、我慢する必要もないよ。」
ネギーン「そう・・・なんだ。」
・・・
ネギーンはお母さんとお父さんに言われた言葉を思い返していました。
『自分に合った友達』がそのうち現れる・・・
クリビーとモモビーは、自分に合っていない友達なのか・・・
そんなことを考えながらぼんやりと歩いていたネギーン。
ある場所に向かうため、途中、イコイコ公園の中を通り抜けて進んでいました。
ところが、ふと、目の前を見ると、この町で見慣れない、怪しい雰囲気の男性がこちらに向かって歩いてきていました。
ぼんやりしていたネギーンも、ついハッとして、我に返ります。

その怪しい男は、サングラスに、マスクをして、コートのポケットに両手を隠したまま、少し早足で歩いてきました。
背が高く細身で、やさいの種類はニラ?か小ネギ?か青い葉物の男性でした。
ネギーンは緊張してすれ違いましたが、その怪しい男はネギーンの方を振り返ることもなく、足早に公園の中をすり抜け、町のほうに去ってゆきました。
ネギーン「(見かけない人ですね・・・ちょっと怖い感じがしました・・・。)」
事なきを経て、ネギーンは少しホッとして、そのまま歩いていました。
すると、すぐにまた、正面から息を切らして走ってくる人の姿が・・・!
???「ハァ・・・、ハァ・・・。」
その人はなんと、

ネギーン「ナスビー博士!!!」
ナスビー「おお!ネギーン!!!今、ニラッチがここを通らなかったか!?」
ネギーン「二、ニラッチ???」
会ったとたん、とても興奮して急いでいる様子のナスビー博士。ニラッチって一体、誰のこと!?と、思ったネギーンでしたが、さっきすれ違ったニラらしき男性のことがとっさに繋がりました。
ネギーン「ニラっぽい男性の方でしたら、今、ちょうどすれ違いましたが・・・その人のことですか?」
ナスビー「多分、そうだ!顔のいい男だったろ!?」
ネギーン「顔は・・・見えなかったのでわからないですが・・・。」
ナスビー「この辺りに住んでるニラは他に知らないから、おそらくそれがニラッチだ!そいつは、どっちに向かって行った!?」
ネギーン「町の方に行きましたけど・・・。」
ナスビー「そうか!ネギーン、ありがとう!それじゃ!!!」
ネギーン「ああっ!待って下さい、博士っ・・・。」
どうやらナスビー博士はそのニラッチという怪しいニラ男を追いかけているようでした。
ネギーンの呼びかけを無視して、ニラ男の向かった町の方へ走って行ってしまいました。
それも、あの、いつも履いている『突っかけサンダル』で、パタパタと、走りにくそうに・・・。

ネギーン「(行っちゃった・・・。)」
ネギーンは少しの間、その場に立ち尽くしました。
ネギーンが向かっていた『ある場所』とは、ナスビー博士の研究所だったのです。
ネギーンは友達に抱えている悩みを、ナスビー博士に相談しようと思っていたのです。
もちろん、お父さんとお母さんに相談した意見も忘れていませんでした。
しかし、クリビーのことも、モモビーのことも、よく知っているナスビー博士ならどんなアドバイスをくれるか、知りたかったのです。
ネギーン「(この悩みは、小学校の他の友達にも、先生にも言えないです・・・。もし、友達や先生に言ったら、クリビーとモモビーに、僕が悩んでることがすぐに伝わってしまいます・・・。ナスビー博士ならその辺り、秘密にして何か良いアドバイスをくれると思ったんですけど・・・。)」
そんなことで、ナスビー博士がいないのなら研究所に向かっても仕方がありません。
ネギーンは、また日を改めようと思いました。
ネギーン「(気持ちがいい天気ですし、このまま散歩をしましょう・・・。)」
ネギーンはまた歩き始めました。
公園を抜けて、町の外れの方へ足を延ばそうと思いました。
すると・・・
つづく


