【第37話】自分に合った友達#8

おはなし

ネギーンはマルナス助手に連れられ、研究所の3階にある休憩室へと移動しました。

マルナス「・・・気分はどうカナ?これ、ジュースでも飲んで、ゆっくり休んで下サイ!」

マルナス助手は、ネギーンに、キャロットジュースを持って来てくれました。

ネギーン「マルナスさん、ありがとうございます。・・・泣いてしまって、ご心配をおかけして、ごめんなさい。今はもう、気分も落ち着いて、全然大丈夫です。」

マルナス「ヨカッタ、ヨカッタ!しかし、そんなに影響力の強い体験だったんダネ・・・これは装置の設定を少し見直さないとッ・・・!」

マルナス助手によると、装置が作動していた時間はたったの5分だったとのことです。ネギーンにとってこの仮想空間での体験はとてもリアルな記憶でした。今思い返すと、一晩中はっきりとした夢を見ていたような感覚です。

マルナス「これで実験のデータも取れたことだし、あとは少しの調整でOKカナ~♪いやはや、協力してくれて本当に助かったヨ!アリガトウ、ネギーン君!」

ネギーン「いえいえ、こちらこそです!とても貴重な体験でした。僕からも、感謝ですぅ。ありがとうございました!」

これでマルナス助手のお手伝いは済んだようです。

???「トホホ~・・・。」

聞きなれた、低い、おじさんの声、がしました。

ネギーンは、ふと、3階へ登ってきた階段の方を見ると、そこにはナスビー博士の姿がありました。

ナスビー「サンダルが、ちぎれてしまった・・・。」

マルナス「もぉ~、博士!今更戻って来るなんテッ!実験はワタシの方でもう済ませちゃいましたカラネッ!」

ナスビー博士は、片足だけ、あの、いつもの突っかけサンダルを履いていました。

一方の足は、裸足で、階段をゆっくり、トボトボと、登って来たところでした。

ナスビー「おお!ネギーン、来てたのか!」

ネギーン「博士、おじゃましてま~すっ!」

マルナス「ネギーン君に実験のお手伝いをしてもらってたんですヨ!」

ナスビー「そうだったのか!いやあ、助かるなぁ!ありがとう!」

マルナス「それで、結局ニラッチさんらしき人とは会えたんデス?」

ナスビー「いいや・・・結局、見失ってしまったのだ・・・。」

マルナス「そうでしたカ・・・。そもそも、本当にニラッチさんだったんですかネェ・・・?それに、博士ったらそんなサンダルで走るから、そりゃ追いつかないですヨ!」

ナスビー「あれは絶対にニラッチだ!きっと私の立派な研究所の噂を聞いて嫉妬(しっと)してコソコソ見に来たんだ!アイツはそういう性格なんだ!」

マルナス「・・・たしかに、コソコソ、ウロウロしていましたネ・・・。博士に会いたくないのでは・・・?」

ナスビー「まあ、ニラッチとワタシは大親友だからな!親友同士、照れくさくて会いたくないのだろう。」

ネギーン「(マルナスさんの言ってた通りです・・・。ナスビー博士はニラッチさんのことを今も大親友と思っているのですね・・・。)」

ナスビー「そうだ、マルナス!このサンダル、直しておいてくれ!」

マルナス「え!そんな汚いサンダル、直すんデスカ!?新しいの自分で買ってクダサイヨ!」

ナスビー「このサンダルは長年、気に入ってるのだ。それと、今回の反省を活かしてだな、このサンダルとは別で『めちゃくちゃ速く走れる靴』を発明しておこう!」

マルナス「おお!『めちゃくちゃ速く走れる靴』デスカ!いいデスネ!」

ナスビー「だろ?これで次にニラッチを見つけたら必ず追いついてやる!」

マルナス「では早速『めちゃくちゃ速く走れる靴』の設計図を作り始めマスネッ!」

マルナス助手は急にテンションを上げて、その場でピョンピョンと飛び跳ねていました。

ネギーンはナスビー博士とマルナス助手の会話を聞いていましたが、この流れで、よくまあマルナス助手も『めちゃくちゃ速く走れる靴』の発明に賛成するんだなあっと驚きました。

マルナス助手はしっかりして面倒見のよい性格ですが、とにかく発明品の開発に熱心です。たとえ、ナスビー博士の『無茶振り』な提案やヘンテコなアイディアであっても、楽しく仕事をしているようです・・・。

???「おーい!!!ネギーン!!!」

???「ネギーン!ここにいるのー!?」

ネギーンは、ふと、耳をすませると、どこからか、誰かが自分の名前を呼ぶ声が聞こえました。

ネギーン「もしかして・・・!」

ネギーンは3階の丸い枠の形をした窓から、外を見下ろしました。

クリビー「あ!ネギーン、いたーっ!!!」

モモビー「おいっ!探したぞー!ネギーン!!!」

なんと、ネギーンを呼ぶ声の主は、クリビーとモモビーでした。2人ともこちらに気づき、研究所の外で、クリビーは、大きく手を振っています。モモビーは、声を張り上げて、ネギーンを呼んでいます。

ネギーンは急いで3階から階段を降り、研究所の外へ出ました。

クリビーとモモビーは、外に出てきたネギーンの顔を見て、パーッと明るい笑顔になりました。

ネギーン「2人とも!どうして、ここにいると、わかったんですか!?」

モモビー「そりゃ、おれっちたち『大親友』だろ!?」

ネギーン「だ・・・『大親友』ですか!?」

クリビー「ネギーンの行きそうなところなんてすぐわかるよ~!」

モモビー「そうだよ、どうせ自分の家か、図書館か、そうでなければナスビー博士のところにでも行ってるんじゃないかってな!」

ネギーン「そんな・・・探してくれたんですね。勝手にいなくなってしまって、すみません・・・。実は僕・・・。」

ネギーンは2人に合わせてばかりいることに疲れて、勝手にいなくなってしまったという正直な事情を打ち明けようと思いました。しかし、言いかけたところをモモビーの言葉に遮(さえぎ)られ・・・

モモビー「ははは!ネギーンが勝手にいなくなるのはいつものことだからな~!」

ネギーン「え?」

クリビー「ネギーンって、興味あることを見つけたら、そこに一直線だからね。」

モモビー「そうそう、いつも『合わせる』おれっちらの身にもなって欲しいぜ!」

ネギーン「そ、そうですかぁ!?」

ネギーンはとてもビックリしました。クリビーとモモビーは、ネギーンがモヤモヤ悩んでその場からいなくなったことには全く気付いていませんでした。勝手にいなくなる、そんなのいつものことだと言うし、そんな勝手なネギーンに合わせているのは2人だと言うし・・・。

ネギーン「僕って、2人から見たらそんな風に見えるんですね。」

ネギーンは少し恥ずかしくなり、エヘヘと照れ笑いをしました。そして、もう喉のところまで言おうと思っていた2人への不満は、この場において、やっぱり言わなくていいや・・・と思いました。

クリビー「さあ、行こう!」

モモビー「昼寝ごっこも飽きたし!まだ暗くなるまで時間あるから遊ぼうぜー!」

マルナス「いやはや、この3人は本当にいつも仲が良くて微笑ましいデスネ・・・!」

ナスビー「そうだなあ!私は子供の頃、こんなに仲の良い友達は誰もいなかったから、羨ましい限りだな!」

ナスビー博士とマルナス助手は子供たちの様子を見て感心していました。

・・・

つづく