リニューアルオープン初日の歯医者さんに来たクリビーたち三人組。
ところが、歯医者さんの入り口には、これまでに見たことのないほどの大行列ができていました。
この行列に並ぼうか、クリビーたちが迷っていたところ・・・
バババババババババ・・・!
と、ヘリコプターのプロペラ音のような音が聞こえてきました。
そして、その音はだんだん近づいてきて・・・!
ハク先生「おおおーーー!!!君たち、やはり来てくれたのか!!!」
クリビー「ギャーーーーーー!!!!!!ハッ、ハク先生!!!」

ふと、頭上を見上げると、そこにはヘンテコな乗り物に乗ったハク先生の姿がありました!
その、突然、空から現れた乗り物は、大きな丸い鍋のような形をしていました。
胴体の下はプロペラが付いており、ババババと音を立てて高速で回転しています。
操縦席にいるハク先生の両サイドに大きなロボットアームが・・・!
ハク先生「君たち三人が来るのを待っていたぞォ!」
クリビー「え!?」
ネギーン「うわああああ!!!」
モモビー「ぎゃーーー!!!なんだなんだっ!?たたた、助けて~!!!」
ハク先生「ハハハハハっ!さぁ、思う存分楽しんでいってくれたまえ!!!」
ハク先生はそう言うと、なんと、その大きなロボットアームで、クリビー、モモビー、ネギーンの三人を鷲掴み(わしづかみ)にしました。
そして、その場からどんどん高度を上げて、空中を飛んでいったのでした。
クリビー「ぎゃーーー!!!飛んでる~っ!!!怖い~っ!!!」
ハク先生「はははっ!絶対に落とさないから安心したまえ!」
クリビー「そ、そうは言っても・・・。」
突然、すごいスピードで空中を運ばれているクリビーたち・・・!
怖がる三人を心配する様子もなく、ハク先生は普通に話しかけてきました。
ハク先生「君たち、特別招待券を持っているだろう?そのカードを持っていれば、いつでも、並ばずに、無料で、ハク総合アミューズメント歯科テーマパークで好きなだけ遊べるのだ!」
ネギーン「『はく、そうごう、あみゅ~ずめんと、しか、てーまぱーく』!?」
ハク先生「そうだ。ハク歯科医院は『ハク総合アミューズメント歯科テーマパーク』に生まれ変わったのだ!」
モモビー「な、なんじゃそりゃ~・・・!」
ハク先生「君たちの助言の通り、私は、中途半端な怖さの歯医者から『脱却』(だっきゃく)することにしたのだ!ここはスリル満点、ホラー要素満載!絶叫・絶叫・絶叫!がテーマの、もの凄く怖~い歯医者一体型テーマパークなのだ!」
ネギーン「ひえ~・・・なんということでしょう・・・僕たちの助言のせいで・・・!」
『脱却』(だっきゃく)というか、もはや歯医者さんの領域から『逸脱』(いつだつ)してしまっている・・・そう心の中で思ったネギーンでした。
ハク先生「はっはっはっ!君たちには本当に感謝している、改めて礼を言うぞ、ありがとう!!!」
クリビー「ど、どういたしまして・・・。ところで、ハク先生。僕たち無料で入れるっていうけど、入場料って本当はいくらなの?」
ハク先生「1000ベジカ*だ。今日だけは初日イベントとして特別に100ベジカにしたのだ。」
クリビー「なるほど、、、それであんなに大行列が・・・。」
ベジカ*とは、やさいせいの通貨の単位です。まあ、1ベジカ=1円くらいと思って下さい。
(大人の方へ・・・ものすごくデフレ・インフレに物価変動したら、もう1ベジカ=1円は忘れて下さい。)
モモビー「並ばずにって言ってたけど、おれっちたちはこれからどこへ行くんだ!?」
ハク先生「おお、いい質問だ!まず初めはジェットコースターに連れていってやろうと思ってな!ジェットコースターは初日からすでに2時間待ちの大人気でな!」
クリビー「ほんとにーーー!!!僕、実は、ジェットコースター乗ってみたかったんだ!!!」
モモビー「やったーーー!!!おれっちも!!!乗りたい乗りたい!!!」
ネギーン「ひぇ~・・・僕、絶叫マシンはあまり得意でないですが、せっかくのご招待でしたら!!!」
・・・
こうして、ハク先生は空から一っ飛びでクリビーたちをジェットコースター乗り場まで送り届けてくれました。
クリビー、モモビー、ネギーン以外の人たちは、普通に行列に並んで順番を待っています。

モモビー「イエーイ!!!優先で乗れるなんて、めっちゃ気持ちいなあ~!!!」
ロボットアームから解放されたクリビーたち三人。
モモビーは真っ先に飛び出し、乗車口の停止線の前ギリギリまで駆け寄りました。
続いて、ネギーン、クリビーも。係員の誘導で、停止しているジェットコースターに乗り込みました。
クリビー「ふう~!!!怖くてすごくドキドキするけど、楽しみ!」
ネギーン「僕もです!」
モモビー「早く早く!出発しろ~♪」
三人のテンションが高まっているところで、ついにジェットコースターはゆっくりと動き出しました・・・。
ガタン、ゴトン、、ガタン、ゴトン、、
だんだんスピードが上がって・・・
ガタン、、ガタン、、ガタン、、
またゆっくりになって、登り坂の上へ上へと昇ってゆき・・・
クリビー「!!(来るぞ、来るぞ・・・!!!)」

「ギィャあああああああああああーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!」
ジェットコースターは真っ逆さまに猛スピードで急降下してゆきました。
みんなの悲鳴がテーマパーク全体に聞こえるぐらい響き渡ります。
・・・
こうして、その日クリビーたちは一日中、遊園地と化した歯医者さんの中で楽しく過ごしました。観覧車に、お化け屋敷、海賊船や恐竜の出てくるショーなど、スリル満点のアトラクションを思う存分、体験しました。
そして、あっという間に夕方になりました。
クリビーたち三人は、帰り際に、改めてハク先生に御礼とお別れの挨拶のため、対面しました。
ハク先生「三人とも、今日は来てくれてありがとう。最後に、今日はイベントでお菓子を配っているから、これはお土産に受け取っておくれ。」
そう言い、ハク先生はクリビーとネギーンに、お菓子がたくさん入った袋をプレゼントしてくれました。
クリビー「わ~い!お菓子だーーー!!!」
ネギーン「やったー!やったー!嬉しいですぅ!」
ハク先生「はっはっは。やっぱり子供はお菓子が大好きだな!でも、お菓子を食べた後は必ず歯をみがくんだぞ。」
ハク先生は歯医者さんらしいことを言いました。
モモビー「???」

目の前で、お菓子をもらっているクリビー、ネギーン。
さっきからずっと二人と一緒にいるモモビー・・・。
なぜかモモビーは一人だけお菓子がもらえませんでした。
モモビー「あ、あのハク先生?」
ハク先生「何かね?」
モモビー「お、おれっちのお菓子は・・・?」
モモビーは思い切ってハク先生に質問をしてみました。すると、ハク先生は・・・
ハク先生「おお、そうだった!君だ!君!・・・お土産は、診察が終わってからだぁーーー!」
モモビー「し、しんさつ!?」
ハク先生はそう言うと、一枚の写真を取り出して、モモビーに見せました。
なんと、それは、今日乗ったジェットコースターの写真でした。
急降下する瞬間のジェットコースターに、口を大きく開けたモモビーが写っています。
ハク先生「そしてこれが、君の口の中の拡大写真だ・・・。」
そう言って、2枚目の写真を取り出すハク先生・・・。

ハク先生はにっこりと笑いながら、モモビーに詰め寄り、こう囁きました・・・。
ハク先生「・・・右下5番、C2(シー・ツー)。」
モモビー「し、しーつぅー・・・???」
ハク先生「いや~、悪化する前に発見できてよかったなぁ君!」
モモビーは唾(つば)をゴクリと飲みました・・・。
モモビー「先生、C2って、も、もしかして・・・!?」
ハク先生「そうだ。『虫歯』という意味だ。」
モモビー「うげっ!おれっちの虫歯のこと、バレた~~~!!!」
ハク先生「はっはっは。これはもう削るしかないぞ!覚悟したまえ!」

モモビー「うぎゃーーーー!!!なんでこうなるのーーーー!!!?」
逃げ回るモモビーを追い掛け回すハク先生。
やはり本職である歯医者さんの仕事をしっかりこなすハク先生だったのでした・・・。
みんなは、モモビーみたいに虫歯があっても隠していたらダメだよ!
虫歯にならないように、毎日歯磨きをして、ちゃんと歯医者さんに診てもらってね。
みんなの町の歯医者さんは怖くない???
この町唯一の歯医者さんのおはなしは、これにて一件落着!
おしまい


