クリビーは届いていた手紙を確認しました。
封筒には大きなチラシのような印刷物1枚と、少し分厚いプラスチックのような青いカードが1枚、入っていました。
クリビーは大きなチラシの方を広げてみました。

そのチラシは、ハク歯科医院がこの秋、10月31日にリニューアルオープンをするというお知らせでした。チラシにはカッコよすぎるハク先生の顔写真が・・・。
チラシの情報によると、あのお化け城はリフォームをして新しくするということが書いてありました。また10月31日のオープン当日は、イベントを開催するとのことです。
10月31日というと、また今から更に1ヶ月くらい先の日です。
クリビー「(ハク先生・・・僕たちが、ああやって意見を言ったことがきっかけでリニューアルを・・・!?)」
クリビーたちは決して歯医者さんのことを悪く言ったつもりはありません。でも、ハク先生は大人だから、子供からお化けの城のように思われてることに気づいてくれたのかもしれません。クリビーはそう思いました。
クリビー「(あの怖いお城がなくなって、新しい歯医者さんに生まれ変わるなら、患者さんもたくさん来てくれるかも・・・?)」
またそのチラシと一緒に入っていたプラスチックの青いカードには『特別招待券 クリビー様』と書かれていました。きっと、これはハク先生からの感謝の気持ちで、リニューアルした歯医者への特別な招待を意味していました。
クリビー「(僕たち、ハク先生のために良いことができたのかもしれない!)」
クリビーはハク先生からの御礼の気持ちを受け取って、とても嬉しくなりました。
そして、次の日のこと。
クリビーは学校からの帰り道に、なんとなくハク歯科医院がある場所を見に行ってみました。
すると、そこにはたくさんの町の人が立ち止まっていました。

あのお城のような建物には大きなカバーがかけられて、建物全体が見えなくなっていました。
またとても大きなクレーン車が何台も設置されていました。
お城まで続いていた長い階段は撤去され、崖の上に建っている城があった場所まで行く道は無くなっていました。
工事中につき、立ち入り禁止のバリケード看板や赤のカラーコーンが崖の手前まで並んでいます。
「こりゃすごい大規模な工事になりますなあ!」
「にしても、町長さんたら、みんなの税金を勝手にハク先生にあげてしまうなんて・・・大胆だわ。」
「でも、町の人たちみんな歯医者(が怖くて)行けなくて困ってたから、よかったんじゃないですか?」
「おかげで工事業者は大忙しですよ!1ヶ月で完成させなきゃいけないんで、急急急急急ピッチで進めてるらしいですよ!それで工事関係者の休憩中の弁当が大量に必要で、弁当屋もすごい儲かってるらしくて。」
「新しいことが始めると、仕事が増えて、町に活気が出てきますなあ~。」
「どんな歯医者になるのか、楽しみですなあ。」
クリビーが人だかりの横を通り過ぎると、町の人の色々な囁きが聞こえてきました。
町の人たちは、ハク歯科医院がリニューアルすることを良く思っている人の方が多いようでした。
・・・
クリビー「二人とも~、お待たせ!」
モモビー「よっ!」
ネギーン「クリビー、待ってました!」
その日、またいつものようのにクリビーはモモビー、ネギーンと公園で遊ぶ約束をしていました。
クリビーは、ハク先生から送られてきた青いカードを二人に見せようと、ポケットの中に忍ばせていました。
クリビー「ジャ~ン!見て、これ、ハク先生から送られて来たんだ!」
クリビーがカードを二人に見せると、
モモビー「じゃ~ん!それ、おれっちにも届いたぜ!」
ネギーン「僕もでーす!」
なんと、三人とも、ハク先生から届いた青い『特別招待券』を持ってきていました!
クリビー「二人にも!?よかった!!!これ、どうやって使うんだろう?」

ネギーン「よく見ると、PREMIUM PASSって書いてあるので、これを持って歯医者さん行けば特別扱いをしてくれるのかもしれないですね!」
モモビー「そうなのか!にしても、カードってかっこいいよな!おれっち、こうやって大人みたいにカードを持ち歩くのが夢だったんだ!」
クリビー「わあ~、なんだか新しくなった歯医者さんに行くのが楽しみだね!」
クリビーたち三人とも、このカードを手にしたことで、とてもワクワクしていました。
・・・
それから約1ヶ月がたちました。
今日は10月31日、ハク歯科医院のリニューアルオープンの日です。
イベントがあると聞いて、町中の人たちが歯医者さんの場所に大勢集まっていました。
今日は学校がお休みなので、大人だけでなく、子供たちもたくさん来ています。
クリビー、モモビー、ネギーンの三人も、少し出遅れましたが、ハク歯科医院に急いで向かっています。
もちろん、三人ともあの青いカードを大事に持って来ました。
クリビー「うぁ〜!すごい行列だ!」
ネギーン「本当ですね!こんなに遠くから既に行列ができているとすると、歯医者さんの入り口までに何時間かかるんでしょう・・・。」
モモビー「2人とも、悪いなぁ・・・おれっちが寝坊しなければもっと早く並べたのに!本当にごめん!」
ネギーン「過ぎたことは仕方ないですよ!地道に並びましょう!」
クリビー「って、ネギーン!!!モモビー!!!大変だーーーーー!!!見て!!!見て!!!」
ふと、クリビーが行列の先頭の方を見ると、そこには、ありえない光景が見えました・・・!

クリビー「ギャーーーーーー!!!!!なんじゃこりゃーーーーーー!!!!!」
そこは、まさしく、新しく(?)リニューアルした歯医者さんでした・・・が、観覧車に、ジェットコースター、露天風呂(?)などが設置されており、巨大なビルが何棟も新しく建設されていました。
その様子は、朝なのにまるで深夜のように暗く、ギラギラした電飾の色がとても不気味で独特の空気を作っていました。
今までのお化けが出そうな怖さとは違い、何か心の闇を感じるようなスッキリしない怖さを感じたクリビーたちでした。
ネオンのカラフルな灯りは、派手できれいな色をたくさん使っているのに、決して明るい雰囲気が感じられません。
ただ、これはこれで、一つの世界を作っているようで、不思議な魅力を感じる部分がありました。
モモビー「なんてこった・・・ハク先生、おれっちたちが『怖さが足りない』『ジェットコースターを付けたらいい』を本気にしちまったんだ・・・。」
ネギーン「まさか、歯医者さんがこんな方向に変わってしまうなんて、予想外でしたね・・・。」
クリビーたち三人が腰を抜かして驚いていると、あの、聞き覚えのある、低くて大きな声が聞こえてきました。
ハク先生「おおおーーー!!!君たち、やはり来てくれたのか!!!」
クリビー「ギャーーーーーー!!!!!」
行列に並ぼうとしていたクリビーたち三人に気付き、遠くからハク先生が近づいてきました。その、驚くべき姿のハク先生を見たクリビーは、またも大きな声で悲鳴をあげました。
つづく


