閉ざされたロッジの地下室にて、ニラッチ博士はナスビー博士に語りかけます。
ニラッチ「古代文字を解読することに成功した唯一の人物、ダドナス氏。それがお前の父親だ。」
ナスビー「・・・。」
ニラッチ「しかし、残念なことに、そのダドナス氏は行方不明・・・。お前には気の毒なことだが、行方不明になってからもう20年以上が経つ。お前ももう、わかっていると思うが、もはや生存している可能性は低い。・・・そういう訳で、この文字の解読は困難と思われた。」
ナスビー「・・・。」
ナスビー博士は、行方不明になった父親の安否を、あえて考えないように生きてきました。そんなナスビー博士の気持ちを全く考えないニラッチ博士の心ない言葉です。
ニラッチ「ククク、まぁ、そんな顔で私を睨むな。私にはわからないのだ、家族を失った者の気持ちが・・・。そもそも私は生まれたときから家族などいなかったからな。」
ナスビー博士はニラッチ博士が言う通り、彼に家族がいなかったことを知っていました。父親の死を断言されたにも関わらず、ニラッチ博士のボヤキはナスビー博士への同情を誘うものでした。
ナスビー「いや、ニラッチ・・・その・・・。」
ナスビー博士は一度言葉を詰まらせましたが、続けてこう言い直しました。
ナスビー「それで、その・・・古代文字が解読できなくて残念だった、という話だな?・・・そうだな、もし親父がここにいれば、私からも頼んでだな、その古代文字の解読に、協力もできたんだがな、いや〜、残念だったなぁ・・・。」
ニラッチ「ナスビー。」
ナスビー「???」
ニラッチ「読めるんだろ?お前も。」
ナスビー「えっ・・・!?」
ニラッチ「知っているぞ、お前は子供の頃に、この文字の読み方を父親から引き継いだんだ。」
ナスビー博士はその言葉を聞いてギョッとしました・・・。自分も古代文字が読める・・・そのことは、自分と父親であるダドナスしか知らない、母親すら知らない、秘密にしていたことだったからです。
ナスビー「・・・どうしてそれを!?」
ニラッチ「フフフ。」
ナスビー「(・・・もしかしかして、ニラッチは私をからかって、適当に言っているのか???それとも、父がニラッチにこのことを伝えた・・・???いや、それはありえない・・・父がいなくなったのは20年以上前・・・私もニラッチもまだ子供の頃のはず・・・。)」
なぜニラッチ博士がそのことを知っているのか不思議で、ナスビー博士の頭の中は混乱しました。
ニラッチ「・・・これでわかったか?お前はただ、ここに書いてある古代文字を翻訳してくれればいいのさ。」
思いもよらないニラッチ博士の意図に、驚きと戸惑いを隠せないナスビー博士。
ナスビー「いやいや!確かに、親父からその、古代文字とやらを見せられたこともあったような、なかったような、そんな気もするが、なんせな、相当昔のことだから、読み方なんか、もうとっくに忘れてしまったわい!ああ、残念だな〜残念だな〜・・・!」
ニラッチ「フフフ、そうかそうか、それはとても残念だな・・・。」
ナスビー「ああ!ほんとに残念残念!せっかくだが、その古代文字ぃ〜?の、翻訳ぅ〜?だっけ???私にその仕事を頼もうとしたんなら、全くの見当違いだ!他を当たるか、自分でなんとかするなり、頑張ってくれ!すまないなあ、親友よ・・・!」
そう誤魔化すナスビー博士でしたが、しかし・・・
ニラッチ「ククク・・・相変わらず、嘘が下手だなナスビー。」
ナスビー「ひ、ひえ~・・・?嘘じゃないさ、本当の本当に、読み方を忘れてしまったんだ!!!20年以上前のことだしぃ~!?」
ニラッチ「そうかそうか、それは残念。・・・じゃあ、これではどうかな?」
そう言い、ニラッチ博士はニヤリとし、ポケットから取り出したリモコンのスイッチをピッと押しました。
すると、部屋のさらに奥の薄暗い場所の照明がつきました。
そこに、姿を現したものとは・・・
ナスビー「な、なんと!」
・・・
その頃、ロッジの地下で何が起きているかわからないクリビーたち3人。これからどうしようものかと不安でいっぱいになっていました。
ネギーン「これじゃ、ナスビー博士を心配するどころか、僕たち自身、帰り道もわからなく、とてもピンチな状況ですぅ!」
モモビー「おれっちのせいだ・・・。おれっちがおっさんに嘘をついてお金を出させなかったら、電車を降りることもなかったし、こんな危ないところまで来ることもなかったし。そもそも、おれっちがクリスマスを嫌いだって言ったから、2人を変な遊びに付き合わせることになっちゃったし・・・。」
ネギーン「モモビーのせいじゃないですよ!僕たち全員、つい夢中になり過ぎてしまいました・・・。お小遣いが足りないと気づいた時点で僕が引き返そうと言っていれば・・・。」
さっきまで調子に乗って追跡ごっこを楽しんでいた3人でしたが、まさかこんなことになるなんて・・・!
冷静に考えると、帰る道もわからなく、雪山は寒く、ロッジの中では事件が起き、八方ふさがりの状況です。
モモビーも、ネギーンも、さっきまでの元気を全く失ってしまいました。
クリビー「2人ともこんなときは弱気になっちゃダメだよ!ピンチのときこそ、チャンスをつかまなきゃ!」
クリビーは2人を元気づける言葉を言いました。しかし、本心は2人と同じくらい不安でいっぱいでした。
クリビー「・・・プラスに考えよう!もし、僕たちがナスビー博士を追っていなかったら、博士が事件に巻き込まれたことに誰も気づかなかったかもしれないよ!」
ネギーン「確かにそうですけど・・・。今の僕たちでナスビー博士を助けるなんて可能なんでしょうか?もし、僕たちまであのニラッチ博士って人に見つかってしまったら・・・。」
クリビー「・・・。」
モモビー「・・・。」
シーン・・・。
しばらく、3人は無言になりました。
シャンシャンシャンシャン・・・
すると、突然、静かな雪山に、どこからか鈴の音のような音が聞こえて来ました。
クリビー「何の音・・・?」
モモビー「あっ!あれ見ろっ!」
ネギーン「!!!」
モモビーが指さす方向の空を見上げると、なんと、トナカイが引くソリに乗ったサンタクロースが空を飛んでいました。
クリビー「もしかして、サンタさん!?」
モモビー「サンタだっ!!!」
ネギーン「ま、まさか!!!サンタクロースが本当にいるなんて!!」
クリビーたち3人はサンタクロースが存在したことに驚くとともに、必死で自分たちのSOSを訴えました。
クリビー「サンタさーん!!!助けてー!!!」
モモビー「助けてくれ~!!!おれっちたち、遭難しそうなんだ~!!!」
ネギーン「助けて下さーいっ!!!ロッジで事件が起きてるかもしれないんです!!!」
クリビーたち3人は必死に大声で叫びました。すると、サンタクロースの方もクリビーたちの存在に気づいたのか、進んでいた方向を変え、こちらに向かってきました。
近づいてくるトナカイとソリに乗ったサンタクロース。それは、よく見ると、ロボットのトナカイと、ロボットのサンタクロースでした。
そうです、これは、今朝、マルナス助手が飛ばした100体のサンタロボのうちの、1体だったのです!
・・・
ちょうどその頃、一方のクリビーたちの住む町では、ある騒ぎが起きていました。
シロナス「マルナスさんっ!ナスビー博士は、どこですか!?」
シロナス医院のお医者さんである白ナスのシロナス先生、そのシロナス医院で働く看護師でありナスミさんの同僚である2人、カボチャのチャコさん、さくらんぼのチェリ子さんが、ナスビー博士の研究所に押しかけていました。
マルナス「わっ!シロナス先生っ!それに、看護師さんたち・・・っ!病院はどうしたんデスカ?」
シロナス「病院は例にならって、代わりに弟のナスのすけに出てもらってます。それより、ナスビー博士はどこですか???」
マルナス「え・・・?ナスビー博士なら珍しく出かけると言って、明日まで戻らないと聞いていマースガッ・・・!」
シロナス「泊りで出かけた・・・!?行先はどこですか!?」
いつも親切でやさしいシロナス先生ですが、今日は切迫した表情でマルナス助手に詰め寄っています。
マルナス「せ、先生、今日は一体、どうしたんデスカ???」
シロナス「・・・ナスミさんがいなくなったんです!!!」
マルナス「え!?」
シロナス「それも、こんな置手紙を残して・・・。」
シロナス先生は着ているジャケットのポケットからその置手紙を取り出しました。
なんと、その手紙の封筒は深緑色で、赤い封蝋を剥がして開けた跡がありました。
マルナス助手はその手紙の内容を見て、紫色の顔が真っ青になりました。
つづく
